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残したいビス

残したいビス

古くよりある曲木(まげき)という技法は、19世紀半ばにドイツ人ミヒャエル・トーネットがそれまで1つ1つチェアを作り上げるのが一般的だったものを、パーツに分けて生産し組み立てる方法を見出したことにより量産化を成功させ、広く普及したチェアです。
こちらはマルニ木工が創業当初に、初めて商品化した日本製の曲木の椅子です。

お客様より、こちらの椅子の木部の割れを修理して欲しいとご依頼をいただきました。
割れの具合によっては修理が難しいこともご説明させていただいたのですが、「それでもいいので一度修理を試してみてほしい」とご要望され、大切にされている椅子であることを実感しました。

椅子全体の状態を確認する点検も終え、いざ身の引き締まる思いで修理開始です。

製造当時煮付けられていたビスを残して修理を行う



修理のための補助パーツを作成

このような修理の場合ですと、通常は一度部品を外してから接着、そして再度組み立てという流れになります。しかし外した際にビスが変形してしまっては、新しいものとの交換が必要になってしまい、大きく趣が変わってきてしまいます。そのため今回は分解せずに修理を行うことにしました。

割れが生じている隙間に接着剤を注入しクランプで固定するのですが、今回のようなケースではクランプ(材を接着するときなどに使う締めつけ具)設置面がカーブ形状になっているためにそのままではうまく固定ができません。
そこで、クランプからうまく力が伝わるよう木材で補助パーツを作成し、接着に成功しました。

自作のクランプ固定パーツ


作業効率だけを考えるとビスを新しいものに変えてしまうことが簡単であり早いのですが、そうすると本来この椅子の持つ趣が大幅に変わってきてしまいます。
もちろん、そのようなご要望であれば新しい見た目へと生まれ変わらせる修理となりますが、年代物のパーツ自体にも価値があります。今回は元のビスを残し、生かすことを大切にしました。 わたしたちはビスひとつにも本気で向き合います。

マルニファニシングでは、愛着を持って長くお使いの品を蘇らす、お使いただく方の「思い」に寄り添った修理を心がけております。

昔の趣のまま使い続けたい方も、イメージをガラッと変えて使い続けたい方も、まずはお気軽にご相談ください。

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